「もしかして、東大理三ですか?」と聞いた。
返事は、「そう。」だった。
かなり普通に返された。本人なので。
情報がほとんどないプロフィールだった

ペアーズを始めてしばらくした頃、研究医の男性からいいねが来た。
プロフィールはかなり薄かった。
自己紹介も短い。趣味もよく分からない。写真はマスク姿。情報がない。かなりない。
普通ならそのまま流していたかもしれない。
でも私の嗅覚が、「この人、絶対頭いい」と言っていた。
婚活に必要なのかは分からない嗅覚である。
私は賢い人が好きだった。なので、やり取りしてみることにした。
驚くべき推理力を発揮した
話していると、「人と話す機会を増やしたくてアプリを始めた」と言っていた。
恋人が欲しくて仕方ない、という感じではない。かなり淡々としている。
さらに、「やりたい研究があって大学を選んだ」という話になった。
ここで私は考えた。
研究医、頭が良さそう、やりたい研究で大学を選んだ。これは。
私は驚くべき推理力を発揮した。
「もしかして、東大理三ですか?」
「そう。」
当たった。すごい。私すごい。と思った。
向こうは特に驚いていなかった。
当然である。本人なので。
急に会うことになった
数日後、「今日予定空いたんですけど、会いませんか?」と連絡が来た。
今日。急である。でも私は予定がなかった。
理三も気になる。会うことにした。
プロフィール写真はマスク姿だったので、顔はよく分かっていなかった。
待ち合わせ場所に行った。
普通にかっこよかった。頭がいい、研究している、顔もいい。天は二物を与えていた。
私は気後れした。
そして、全く熱量を感じなかった

カフェに入った。
失礼な人ではなかった。普通に話す。質問にも答える。会話も成立する。
ただ、脈がない。かなりない。
言葉にされてはいない。でも分かる。
私は今、恋愛対象として特に盛り上がられていない。
研究の話になると、「実験作業は外に出して、自分は考える方に時間を使う」というような話をしていた。
なるほど。自分の時間を何に使うか、かなりはっきりしている。
人間関係についても、自大学の人とそうでない人で関わり方を変えているらしい。
合理的。かなり合理的。
私は途中から、今日私と会っているこの時間も、「ここにリソース使う必要ないな」判定されていませんように、と少し祈っていた。
研究医と会って、なぜ私は自分のROIを心配しているのだろう。
会計は普通に割り勘だった
会計は2000円くらいだった。
プロフィールには、たしか、「男性が全部払う」と書いてあった。
私は一応、「1000円出します」と言った。社交辞令も少し入っていた。
彼は、普通に受け取った。
あ、受け取るんや。
どうやら私は、ここで2000円を投じる対象ではなかったらしい。合理的である。
LINEは交換した
帰り際、「LINE交換しましょう」と彼が言った。
交換するんや。少し意外だった。
脈を感じていなかったので、「ここから何かあるのか?」と一瞬だけ思った。
LINEを交換した。
そして彼が、「苗字って何ですか?」と聞いた。
苗字。ここで?
私は答えた。せっかくなので私も、「そちらは?」と聞いた。
お互い、苗字だけ知った。
その後、LINEは続かなかった。終わった。
最後に残ったのは、苗字だった
今でも少しだけ分からない。
なぜ最後に苗字を聞いたのだろう。もう一度会うわけでもない。連絡が続くわけでもない。仕事で関わるわけでもない。
でも、お互い苗字だけは知っている。
東大理三、研究医、イケメン。
私は一瞬かなり盛り上がった。
向こうはたぶん、そこまで盛り上がっていなかった。
そして最後に残ったのは、苗字だった。
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